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OSHIKIKEIGO「メイラード」ジャケ写

OSHIKIKEIGO メイラード

心のわだかまり、憤りをゆったり溶かす「メイラード」

文 / 森朋之

紙にペンを走らせる音が聞こえてきた次の瞬間、親密さとしなやかなさを共存させた歌声が耳に飛び込んでくる。あとはもう、楽曲の世界に身を任せるだけ。テレビアニメ「フェルマーの料理」のオープニング主題歌として書き下ろされたOSHIKIKEIGOの最新曲「メイラード」。一瞬にして聴く者を惹き付ける、極上のポップチューンだ。

2024年春、SNSで楽曲を切り出して投稿し始めた直後から、メジャーレーベルや音楽事務所からオファーが殺到。1年を待たずして1stデジタルシングル「モナリザ」でデビューを果たし、「オッドアイ」「ダサめのステップ」と曲を重ねるごとに評価、知名度、求心力を上げ続け……と説明すると「また音楽メディアのハイプなのでは?」と身構えてしまう方がいるかもしれないが、「メイラード」を聴けば、「なるほど、これはヤバい」と実感してもらえるはずだ。

まず特筆すべきは、楽曲全体を貫くグルーヴの気持ちよさと、緻密に構築されたサウンドメイクの素晴らしさ。ソウル / ファンクのエッセンスを反映させながら、静寂と躍動のコントラストを生かしつつ、リスナーの感情と体をナチュラルに揺り動かすサウンドメイクはすでに完成の域に達している。こちら側の予測を気持ちよく裏切る仕掛けもふんだんに取り込まれ、何度リピートしても飽きることがない中毒性もこの曲の魅力だ。

歌詞のモチーフは、過熱によって焼き色が付き香ばしい風味が生まれる現象・メイラード反応。過去の失敗やつまづきを“焦げ”というメタファーに置き換え、「僕らメイラード 恋焦がれ 線上を駆け走った」というフレーズが洗練されたメロディとともに届けられることによって、リスナーの心の中にあるわだかまり、憤りをゆったりと溶かしてくれるのだ。

抑制を効かせながらも、エモーショナルな色合いを感じさせるボーカルも絶品。初のタイアップ曲によって、OSHIKIKEIGOという名前はさらに幅広い音楽リスナーに浸透するはず。2025年後半の音楽シーンにおける最も注目すべきアーティストであることは間違いないだろう。

OSHIKIKEIGO「メイラード」オフィシャルオーディオ

OSHIKIKEIGO「メイラード」
2025年7月2日(水)配信開始 / UNIVERSAL SIGMA / OK Lab.
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作詞・作曲・編曲:OSHIKIKEIGO

OSHIKIKEIGO(オシキケイゴ)

OSHIKIKEIGO

ソングライティング、トラックメイクなどセルフプロデュースで楽曲制作を行うソロアーティスト。2024年にSNSで楽曲投稿を開始すると、ユーザーから大きな反響を呼ぶ。2025年4月にユニバーサルミュージックから「モナリザ」でメジャーデビューし、各音楽ストリーミングサービスの主要プレイリストに多数選出される。7月にはテレビアニメ「フェルマーの料理」オープニング主題歌「メイラード」をリリースした。