岸田國士戯曲賞授賞式、安藤奎がアンパサンド・スリラー披露 笠木泉は天国の師匠に感謝

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第69回岸田國士戯曲賞の授賞式が昨日5月12日に東京・日本出版クラブで行われ、受賞者の安藤奎笠木泉が出席した。

第69回岸田國士戯曲賞授賞式より、左から安藤奎、笠木泉。

第69回岸田國士戯曲賞授賞式より、左から安藤奎、笠木泉。

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前列左から安藤奎、笠木泉。後列左からタニノクロウ、岡田利規、上田誠、本谷有希子、野田秀樹。

前列左から安藤奎、笠木泉。後列左からタニノクロウ、岡田利規、上田誠、本谷有希子、野田秀樹。[拡大]

岸田國士戯曲賞は白水社が主催する戯曲賞。第69回岸田國士戯曲賞の最終候補作品には、安藤の「歩かなくても棒に当たる」と笠木の「海まで100年」に加え、小野晃太朗の「ひとえに」、兼島拓也の「花売の縁オン(ザ)ライン」、倉橋真奈美の「睡眠遊行」、佐藤二朗の「そのいのち」、山本正典の「おかえりなさせませんなさい」、ユニ・ホン・シャープの「ENCORE - violet」が選出されていた。選考委員を務めたのは市原佐都子、上田誠岡田利規タニノクロウ野田秀樹本谷有希子、矢内原美邦。

岡田利規

岡田利規[拡大]

授賞式ではまず、選考委員を代表して岡田があいさつ。岡田は「選考会では良い議論をすることができました。議論の材料を提供してくれた最終候補作品8作品、およびそれらを書かれた8名の劇作家に対して、心から感謝します。今回の選考で得たものを、今後演劇界で活躍する人たちに還元していきたいと考えています」と思いを語る。

安藤奎

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左から安藤奎、笠木泉。

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続いて、安藤と笠木が受賞にあたって言葉を述べた。劇団アンパサンドを主宰する安藤は、昨年8月の「歩かなくても棒に当たる」の公演を振り返り、「大好きな俳優の皆さんに出演いただいた、自分自身にとって非常に思い出深い作品でしたので、このような賞をいただくことができ、とてもうれしく思っております。中でも印象に残った出来事がありまして……」と切り出す。安藤が「川上友里さん演じるサナエさんが死んだあと、西出結さん演じるユウコの肩にサナエさんの顔が“つく”シーンがあるんです。作り物の顔を肩から剥がして床に落とすと、自動的にバタバタ動く仕組みになっているんですが、千秋楽の日にサナエさんの顔が動かなくなるアクシデントが発生して。みんなで『ヤベッ!』となった瞬間に、顔がいつもと違うくねくねした動きをしたんです。終演後、楽屋で『今日の顔の動き、変だったよね』という話をしたんですが、結局電源が入っていなかったことがわかって……」という“アンパサンド・スリラー”なエピソードを明かすと、会場中から「ヒエー!」という声が上がる。安藤はニコリとしながら、「顔は、私たちに気を遣って動いてくれたのかもしれませんね(笑)。そんなふうに、自分たちはいろいろな方々に支えられているんだなと感じました」と話した。

笠木泉

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俳優としてキャリアをスタートさせ、2018年に自身が主宰するソロ演劇ユニット・スヌーヌーを立ち上げた笠木は「1995年、19歳のとき、宮沢章夫さんが主宰する遊園地再生事業団の『知覚の庭』で舞台を踏み、今年芸歴30周年を迎えます」と改めて自己紹介した。また、俳優として活動することの喜び、困難を語りつつ、「人生に行き詰まっていると感じる時期があり、『ああ、これは、戯曲を書かないといけないな。書かないとダメになってしまうかもしれないな』と思ったんです。そこで、スヌーヌーというユニットを始めました。みんなが苦しまず、フラットに、前向きな気持ちで創作できるような場所を作ることが私の使命だと思っているので、これからもとにかく楽しく、みんなと一緒に作品を作っていけたら。最後に、今回の受賞を誰よりも喜んでくれているであろう私の“師匠”に、心から感謝を申し上げます。数年前に亡くなった“師匠”に、受賞したことをお伝えできなかったことが残念でなりませんが、今頃きっと彼岸でニヤニヤしながら、このスピーチを聞いてくれているのではないかと思います」と天を仰いだ。

乾杯の音頭を取るタニノクロウ。

乾杯の音頭を取るタニノクロウ。[拡大]

その後、祝賀会が行われ、選考委員のタニノクロウが乾杯の音頭を取った。タニノは「おそらく今回の受賞が、のちに大きな転換期になったと言われるのではないかと想像しています。今後、クリエイティブな現場にどんどんAIが導入され、AIなしでは作品が執筆できない状況になることが予想されます。それにより、人間が積み重ねてきた能力や記憶、人間が集団で獲得してきた伝統や権力のようなものがゆっくりと失われていくかもしれません。だからこそ、今回受賞されたお二人や最終候補作品に選出された劇作家の方々が、極めて人間らしい言葉を紡ぎ続けてきたことを、心の底から称えたいと思います。乾杯!」とコメントした。

パフォーマスを披露するヌードルズ。

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式の終盤には、安藤サイドの来賓として松尾スズキ山内ケンジ、南海キャンディーズの山崎静代、笠木サイドの来賓としてノゾエ征爾徳永京子鈴木慶一が登壇。また、笠木と親交の深い山崎一の祝辞を上村聡が代読するひと幕も。最後に、笠木とスワッチの音楽ユニット・ヌードルズがウクレレ演奏と歌唱によるパフォーマンスを披露し、会場を盛り上げた。

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第69回岸田國士戯曲賞最終候補作品

  • 安藤奎「歩かなくても棒に当たる」
  • 小野晃太朗「ひとえに」
  • 笠木泉「海まで100年」
  • 兼島拓也「花売の縁オン(ザ)ライン」
  • 倉橋真奈美「睡眠遊行」
  • 佐藤二朗「そのいのち」
  • 山本正典「おかえりなさせませんなさい」
  • ユニ・ホン・シャープ「ENCORE - violet」

読者の反応

山崎一 @HYamazaki12

@stage_natalie お二人ともおめでとうございました㊗️🎊👏👏👏

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